アスベスト(石綿)による健康被害のメカニズム
アスベストとは
天然の繊維状けい酸塩鉱物。構成によって青石綿(クロシドライト)・茶石綿(アモサイト)・白石綿(クリソタイル)などに分類される。特に青石綿・茶石綿は毒性が強い。耐熱性に優れ曲げや引っ張りに強く熱・電気絶縁性があり耐酸性・耐アルカリ性にも優れています。逆に言えば、熱や薬品で分解することが困難。繊維が極めて細い為に飛散しやすく人が吸入してしまう。
アスベストはなぜ危険なのか
飛散したアスベスト繊維を吸い込んでしまうと様々な疾患を引き起こすといわれています。代表的なものとしては肺の奥にアスベスト繊維が刺ささり肺が繊維化してしまい働きが悪くなる石綿肺(潜伏期間15~20年)や 肺がん(潜伏期間15~20年)。そして「肺を取り囲む胸膜」や「肝臓」や「胃を含む腹膜」や「心臓などを覆う心膜」に発症する癌(がん)の一種で中皮種(潜伏期間20~50年)などがあります。これらの疾患は潜伏期間が15年から50年とされているので、これから本格的に発病するといわれています。
日本での使用状況
日本では1960年代から使用量が増加し始め、1970年~1990年頃まで高い使用量で推移していました。
アスベストは吹きつけアスベストとして1975年まで当たり前のようにS造やRC造の断熱や消音材として使われていました。しかし戸建住宅では吹きつけアスベストを使われていることは少ないと言われています。
そして、使用量の減少に向かい始めたのが90年後半です。そのため健康被害が現れるのに潜伏期間が15年から50年と長いためアスベストによる健康被害が本格化するのはこれからではないかと考えられています。
何が問題なのか
いま問題になっているのは1975年に使用禁止の規制がされた飛散性の高い「吹きつけアスベスト」です。1975年までは当たり前のようにS造やRC造の断熱や消音材として使われていましたが、「規制された1975年以降でも重量比5%以内の場合アスベストの規制の対象にならなかった」ため、吹きつけ施工する原料のロックウールにもアスベストを含んでいる場合があるとみられています。
また、ボードやタイルなどの建材に含有されているアスベストは「非飛散性アスベスト」と呼ばれています。このような吹きつけ以外に使われているアスベストはきわめて毒性の低い白石綿と呼ばれるもので通常の使用では問題が無いと考えられていますが、アスベストの使用が盛んであった当時に建てられた住宅の解体や風化・破砕によってアスベストが飛散する恐れがあるので人体に吸入しないよう注意が必要です。
*住宅建材でアスベストが含んでいる可能性の高い建材
屋根用スレート・サイディング・石綿セメント板・けい酸カルシウム板・パルプセメント板・石膏ボード・押出成型板・Pタイル など
吹付アスベストとは
「吹付アスベスト」はアスベストにセメント等の結合材と水を加え混合し吹付け機を用いて吹付けたもので、1955年(昭和30年)頃~1980年(昭和55年)まで、壁・天井・梁・柱などに防火・耐火・吸音・断熱の目的で使用されていました。
また、同様の用途で使用している「吹付けロックウール」にも、1980年(昭和55年)まではアスベストを混合していました。吹付けアスベストを使用した建物は、建築後30年程度経過しているので建て替えや改修の時期を迎えつつあります。
環境省の調査では2020年頃にそのピークを迎えると予測しています。
これらを問題として受け止めて建て替え等に伴う建物解体時のアスベスト飛散を防止する目的で大気汚染防止法が改正されました。
今後の対応として
これまで上記したように屋根や外壁のスレート材・サイディング・天井ボードや壁のボードなどの様々な建材の原料としてたくさん使用されていました。
しかも、これらのアスベストを含有する建材の製造は2004年の10月に全面に禁止になったばかりです。ごくごく最近まで在庫品が販売されていたということも事実です。(日本はやっぱりおかしい)
本当の意味で恐ろしいのは、これからアスベストを使用している建物の老朽化が進み改修や建て替えの時期に入ってきたことです。
私が感じる日本の建築業界は信じられないようなことを平気でおこなうような構造ですから、正しい解体方法や廃棄処分をおこなっていけるか、誰が責任もって指導(アスベストが含んでいるかどうかを見分ける・解体・廃棄など)するのか、解体業者や産廃業者の異常な価格高騰など色々な問題があると思います。
これからは各製造メーカーやゼネコン・住宅メーカー・工務店などがアスベスト含有建材の使用状況などの情報を開示するなどして進んで対応していかなくてはならないと考えています。
これまでのアスベスト規制の動き
1971年:特化科学物質等障害予防規則の制定
1975年:アスベストを5%以上含有するものの吹き付け禁止
1976年:アスベストの代替促進通達
1987年:業界の自主規制により青石綿を使用中止
1995年:青石綿と茶石綿の製造・使用禁止
2004年:アスベストの含有製品の使用禁止
2005年:解体時の対策を定めた『石綿障害予防規則』の7月制定