皆さんは健康な住まいと聞いてどんな家を思い浮かぺますか?おそらく真っ先に自然素材の家が浮かぶことでしょう。シックハウスや化学物井過敏症といった現代病が社会問題化するにつれ、自然素材への関心は日々高まっています。そんなあおりを受けて健康住宅がもてはやされている近頃です。当然の結果として今では自然素材を使った工法が氾濫しているわけですが、私はその工法の多くに疑問を感じています。健康住宅≒自然素材? 自然素材≒無垢の床?珪藻土の塗り壁?…確かにこういった自然素材を使うことは健康な住まい造りに欠かせないことですがそれだけでは『自然素材を使った住宅』に過ぎません。それでは健康な住まいにするための理想的な健康住宅とはいったいどんなものでしようか?
人間は本来自然の中で生活し、行動するように造られています。それは遺伝子の記憶と言っても過言ではありません。太古の昔、人間は大自然の中で暮らしていました。そのときの自然崇拝的な思想が現代人にも受け継がれているように思うのです。自然への畏怖の念を抱きつつその恩恵を受けながら生きていた太古の人々にとって木、土、水そして光・風といった自然は最も身近なものでした。それを現代の暮らしに取り入れることこそが私の考える理想の自然住宅=健康住宅なのです。こうした借念に基づいて造られたのが『ヒカリノトウの家』大阪市
Y邸です。
Y邸は、都心部の商業地域に属した商店街に位置しています。前面道路く(東側)の幅員はわずか4m。しかも正面には高さ10mの建物が続いています。西側は細い1m路地になっていて向いには高さ10mビルが建っているため路地は昼間でも暗い。南北はタウンハウスのため共有の壁構造となっています。Y邸は正に四方を塞がれ風も光も入らない場所に位置していたのです。
私がまず取りかかったのは施主の要望でもある採光と通風の確保です。唯一採光が確保できる屋上を最大限利用し、天からの光を1階まで落とそうと考えました。階段の踏み板は透明のFRPグレーチングとし、階段室の天井部分にはスカイライトを設けました。こうして1階から屋上まで吹ぎ抜ける光り輝く空間が生まれました。光の塔の誕生です。この塔はY邸に自然を取り込む空間として最も重要視しました。『自然を感じる空間が家の中にある』というのは、それだけで住む人は心地よさや豊かさ、時には自然の厳しさや偉大さを感じることができるからです。そういった自然のやさしさに包まれて暮らしてほしいという思いが、この塔には込められているのです。
全体のプランとしては5年後、10年後、15年後を見越したライフスタイルを考慮し、その変化に柔軟に対応できる間取りとしました。プライバシーを守りながらもパブリックスペースは十分な広さを確保.床にはパインの無垢フローリング・壁天井にはエコクロス、タイルはスペイン産のテラコツタタイルと木や土に包まれた空間作りを心がけています。空からの光はガラスブロックやアクリル製の引き戸を通してLDKや各部屋に入り込みます。
|